七ぶらシネマ 第1回
うれしい火星人来襲−50年代映画全盛期の趣
かつて映画が人々の最高の楽しみだった時代、映画館がいっぱい ある繁華街は、現在のわれわれが想像する以上に魅力あふれた場所 だった。静岡市七間町は、そんな町のひとつで、人々は「七ぶらに 行くよ」と言って、ブラブラするだけの目的で、そこに集まった。 中村錦之助の大きな看板を立ち止まって見上げる人や、ベタベタと 張られた安物怪物映画のスチールを食い入るように見る子どもたち。 映画の最盛期だった1950年代のにぎやかさは、そのころ小学生 だった筆者の脳裏にもはっきり焼き付いている。 映画が娯楽の主流からはずれてしまった現在、「七ぶら」をする 人はいなくなり、言葉も使われなくなってしまったが、映画館はそ のまま残り、その映画館が集中する一角は「七ぶらシネマ通り」と 呼ばれるようになった。 5つ建物の中に14の映画館がある、まさにその場所に筆者の自宅 マンションがあり、「七ぶらシネマ」を名のる資格は十分にあると 思う。特に、去年の4月からは、静岡から遠く離れた鹿児島県に単 身赴任中の身。これまで以上に「七ぶら」という響きに愛着を感じ るようになった。 そんな気分の中、この言葉がもっとも頻繁に使われていた50年 代の映画の趣を持つ、一風変った作品を見た。ティム・バートン監 督が火星人の地球襲撃を描いた「マーズ・アタック!」である。 冒頭に大挙して出てくる空飛ぶ円盤のデザインが50年代の安っ ぽいSF映画にでてくるものにそっくりだったし、宇宙にふんわり 浮かんだ格好の、もそもそとした登場の仕方も同様である。建物の 破壊シーンもCGを使っていながら、なんとなくあか抜けない。ど こかで見たような、という気がしていたらテレビに映るゴジラの姿 の挿入があり、うん、これだ! 最近では、一般の人の宇宙に関しての知識が深まり、映画の中で 宇宙人が来たとしても、火星のような近場からは、なかなか来ずら い。来たとしても「火星人ゴーホーム」(ビデオ発売)のように、 目的が地球人を笑わすことだったりする。さらに、太陽系の外から の訪問者の多くは、友好的であったりする。久しぶりの本格的な火 星人の来襲を素直に喜びたい。
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