七ぶらシネマ 第9回

ジャン=クロード・ヴァン・ダムの「マキシマム・ リスク」にはふたつの売りがある。ひとつは、香港ア クション映画の俊鋭、リンゴ・ラム監督を起用してい ること。  最近は、アクション映画のヒーローが強くなりすぎ、 少々の痛手では倒れそうにもない。「デイライト」の スタローンなど、彼自身は大健闘の部類に入ると思う が、見る方は絶対に死ぬことはないと思っているので、 危機感が盛り上がらない。そこで、シュワルツェネッ ガーの「ジングルオール・ザ・ウエイ」のようにコメ ディに逃げたり、この「マキシマム・リスク」のよう に外国の人材を使って語り口を変えてみようというこ とになる。 ヴァン・ダムが香港の監督を招くのは、今回が始め てではなく、すでにジョン・ウーで「ハード・ターゲッ ト」を作っている。この作品でのスローモーションを 多用した独特な切れ味を持ったアクションは、大きな 評判を呼んだ。その後、ウーは「ブロークン・アロー」 を作るなどして、ハリウッドの第一級の監督となって いる。  今回のラム起用も成功だといえる。特に、南フラン スの田舎町の狭い路地で繰りひろげられる追っかけシー ンは、目を見張らされるものがあるし、ヴァン・ダム の体技も、最近になく光っている。 「マキシマム・リスク」のもうひとつの売りは『ヴァ ン・ダム死す!』。「エグゼクティヴ・デシジョン」 のスティーブン・セガールみたいに、話しの途中で居 なくなってしまうのかなと思っていたら、主人公には 双子の弟がいて、そちらの方が、映画の冒頭であっけ なく殺されてしまう(という当たりは、バラしても怒 られないだろう)。 かつて、「11人のカウボーイ」でジョン・ウェイ ンを撃ち殺し、それで有名になったブルース・ダーン のようなケースもあったが、そのことが逆説的に示す ように、映画の中でヒーローが死んでしまうことは、 基本的には、あってはならないこと。ヴァン・ダムに しろセガールにしろ、彼らが死んでしまうことが売り になることは、アメリカ映画が、まだまだ健全娯楽で あることの証拠といえる。 それにひきかえ、現在、日本映画では、映画の中で 誰が死のうが話題になることはない。最近、日本映画 の中での死が話題になったのはゴジラだけ。他方、渥 美清と萬屋錦之助の現実の死は、予想をはるかに越え た波紋を呼んだ。これは、とても悲しいことだと思う。
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