七ぶらシネマ 第16回

本連載の最初で、現在、鹿児島に単身赴任中と書いた。静岡に帰って きたり、あるいは東京への用務と、日常的に飛行機を利用する身となっ た。  元来、飛行機に乗るのは嫌いな方ではなく、席は必ず窓側にとり、離 陸時などは、離れゆく地上の光景を楽しんでいるが、それでも時として 空を飛ぶことに不安を感じることもある。  その不安が何なのかを、スティーブン・キングが「死の舞踏」で的確 に説明してくれている。彼によれば、飛行機で事故にあう確率よりも、 自動車に乗っていて死亡する割合の方が断然多いのに、人々が飛行に恐 怖を感じるのは、機長という未知の人間に自分の命を預けるからだ。  確かにその通りだと思う。キング自身は「ランゴリアーズ」という、 主人公のグループが気がつくと、機長を含めた他のすべての人々がジャ ンボ機から姿を消してしまっているという話を書いているが、やはり、 ごくごく普通の乗客としては機長が健在である方がありがたい。  航空パニック映画の新作「乱気流・タービュランス」では、「ランゴ リアーズ」と似た状況がつくり出される。そこで、ジャンボ機の乗員の ひとりに好きな作家はキングだとのべさせているが、主人公のスチュワー デスが陥る状況は、もっと悪い。 気がつくと、彼女と、もうひとりを除いてジャンボ機から退場してし まっている。その残ったひとりというのが、連続女性殺人犯。必死の思 いで機長席に陣取る彼女に、その殺人犯が襲いかかってくる。 そこへ地上の管制塔からの声。そのまま飛行を続けるとランク六の乱 気流に突っ込む。それは十段階の六かと聞き返すと、いや違う、六段階 の六である。 もう手は出尽くしたと思われるハイジャック映画に新たな切り口をみ せ、飛行機に乗るのが大好きな人間にとっても、スリリングで、恐い作 品になっている。 ところで、この作品、配給会社の試写室で見たが、その時、となりに はテレビでおなじみの気象予報士のMさん。彼のところに配給会社の人 が歩み寄り、どうぞよろしく、なにしろ「乱気流」という題名ですから、 いずれご相談にあずかりたい。 傑作となるためには、映画それ自体に、新しく大胆な切り口が絶対に 必要だが、その作品をヒットさせるために、宣伝にも独自な切り口が必 要だと感じいった。
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