七ぶらシネマ 第17回
一九九三年のアヌシー国際アニメーション映画祭では、五十二歳の宮 崎駿が超大形新人として紹介され脚光を浴びたが、三十代半ばのリュッ クサックを背にした半パン姿の人なつっこいイギリスのおにいさんニッ ク・パークは、既に巨匠の扱いだった。 「快適な生活」でアカデミー賞を得ていたし、「ウォレスとグルミット」 シリーズの第一作「チーズ・ホリデー」が各地の映画祭で受賞を重ねて いたからで、この時はシリーズ二作目の「ペンギンに気をつけろ!」が 特別上映された。 新作の特別上映ということ自体珍しいことだし、また、長編作品以外 は何本か集めて九十分ほどのプログラムにするのが普通だが、この時は 三十分の作品一本のみで、ひとつのプログラムとなっていた。期待のほ ども分ろうというもの。 開場とともにすぐに満員、上映前の期待の高まりは他とは明らかに異 なっていた。待ちくたびれて、会場にビーチボールが舞い始め、観客は わんやの大喝采。そのうちイギリスの重鎮ボブ・ゴットフレイの後頭部 に当たった。彼が立上りにらみを効かすと、場内が一瞬シーンとなるも、 そこでゴッドフレイはヘナヘナと倒れ込むパフォーマンス。拍手喝采だ が、上映が始まると、それに輪をかけた拍手とブラボーの連続だった。 巨匠扱いはある程度当然で、その若さにもかかわらず、パークの人形 アニメーションは、きわめて完成度が高い。顔の些細な表情が精妙、的 確である一方で、それがアクションに移るとスピード感あふれるダイナ ミックな描写に変身する。 それらは、シリーズ第三作「ウォレスとグルミット、危機一髪!」で も健在で、恋に落ちたウォレスの表情の細やかさは絶品だし、クライマ ックスの羊たちのオートバイの集団曲乗りの鮮やかさ。その間には、切 れの良いギャグも満載されている。今年のアヌシー映画祭では観客賞を 得ているし、アカデミー賞も当然である(これで、パークのアカデミー 受賞は三回となった)。 地方都市としては、東京の単館ロードショウ作品が公開される確率が 格段に高い静岡市ではあるが、さすが、この三十分の作品を軸に七本の 作品をたばね、七十分程のプログラムとしたものが公開されることはな いようだ。 事情は解らないでもないが、今年の夏のアニメーションでは、だんと つの一等賞、やはり公開を望みたい。
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