七ぶらシネマ 第19回
同じ映画でも、見た時、見た場所の違いによって、受ける印象が大き
く異なってしまうことがある。
たとえば、ロバート・デ・ニーロ主演の「ザ・ファン」。去年の劇場
公開では、長島巨人軍のメークドラマと機を一にしていた折でもあり、
単純に、デ・ニーロの狂気を感じさせるストーカー振りを楽しめば良か
った。
今回、ビデオで見直すと、球界一のお金を得て「ジャイアンツ」に移
ってきたウェズリー・スナイプスの強打者が大スランプに陥ってしまう
話の方が、日本のジャイアンツにも同様な人がいるわけで、気になって、
気になって仕方がなかった。
という当たりは、まったくの個人的事情によるものだが、映画館とビ
デオとの対比ということでは、「特別編」が作られた「スター・ウォー
ズ」シリーズが、その違いを明確に教えてくれる。同じ版を映画館とビ
デオとで見る時に受ける印象の隔たりの大きさと比べれば、特別編とオ
リジナル版との間の描写の違いなど、些細なこととしか感じられないだ
ろう。(ただし、静岡市でいえば、大きい方から七番目あたりまでの映
画館で上映された時に限る)。
映画館どうしの対比でも、シネラマ用に作られた「2001年宇宙の
旅」では、床面から直接設置された大きく湾曲したスクリーンを持つ劇
場での上映でなければ、本物を見たことにはならないだろう。
また、不用意な灯りがともっているため、場内が明る過ぎ、上映中の
映画が本来持つべき魅力を減じてしまっている映画館でのケース。これ
もまた、本物を見たとは言い難い。
最近は、フィルムの感度も上がり、夜のシーンが多くなってきている
が、特に外国映画では、それらは真っ暗な映画館で上映されることが前
提となっていて、明る過ぎる映画館では、何が映し出されているのかはっ
きりしないことが少なくない。そっくりな犬がいっぱい登場する夜の追
跡シーンがクライマックスだった「101」では、なにがなんだか解ら
ないうちに大団円となってしまった。
筆者の経験では、香港、ハワイ、ロサンゼルス、イギリス、フランス、
スイス、どこでも「非常口」などという不粋な明かりはなく、真っ暗な
中で映画を見た。スクリーンが光り輝いていたことを思い起こす。
友人の体験談にまで広げれば、それはタイ、インドネシア、インドで
も同じ。映画は、テレビとは異なり、真っ暗な中で見るもの、という世
界中の常識が、日本でも常識になってほしいと願っている。
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