7ぶらシネマ 第20回

このところディズニー・アニメは不振な作品が続いている。「美女と 野獣」を手初めに、以後「ライオン・キング」「ポカホンタス」「ノー トルダムの鐘」と、取り上げる題材が重すぎてアニメ本来の飛躍に満ち た表現が、今ひとつ隅に追いやられてしまっているからだ。  と書いたところで、アメリカ漫画映画の歴史について少々の、お勉強。 一九三〇年代のディズニーの独走を阻止すべく、四〇年代に入るとハリ ウッドの各漫画映画スタジオでは、それを打ち破るための試みが行われ、 結果として、アニメの表現方法を拡大するふたつの流れを作った。  ひとつはワーナーやMGM等での、急テンポでハイボルテージなギャ グを満載した作り方で、テックス・アヴェリー派と言われている。バッ グス・バニーが代表的なキャラクターで、そのギャグはジム・キャリー 主演の「マスク」で尊敬の念を持って再現されていた。  可愛い踊り子の姿に、目玉が飛び出し、アゴは地面に落ち、手足は体 から離れてしまう。あるいは、マシンガンの乱射を浴びるが、何ともな く、ひと一息ついたあと、水を飲むと、体からシャワーのごとく水が出 てくる、といった風なギャグである。  もうひとつはUPA(ユナイテッド・プロダクションズ・オブ・アメ リカ)が試みたリミテッド・アニメーションという方法。描画を極端に シンプルにし、動きもそれに似合ったものにした。必ずしも現実の動き に準ぜず、アニメーターの創造力を最大限に尊重したものとしている。  で、ここでディズニーの長編作品に話しを戻すと、不振が続く中で唯 一の傑作が「アラジン」だった。アヴェリー派の表現を取り込み、起伏 に富んだストーリーを、叩き込むような軽快なテンポで語り、すこぶる 気持ちの良い作品となっていた。  この「アラジン」のスタッフによる新作が「ヘラクレス」で、こちら はアヴェリー派の影響を残しつつも、UPAの方法を最大限に取り入れ ている。ごくシンプルな造形による登場人物たちが、主人公の精神的な 成長という重苦しいテーマを、軽やかに、楽しく、それでいて的確に物 語っている。  という次第で、「アラジン」の時のように、気持ち良く映画館を後に しようと思っていたら、Fという、唯でさえ熱唱気味な歌手の、大げさ な身振りによる、主題歌の醜悪なクリップが出現。何を考えているのだ ろうか?、入場料を返せ、とつぶやいてしまった。
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