七ぶらシネマ 第21回
この夏は史上最多の本数のアニメーションが公開された。それを受け
本連載でも「もののけ姫」「ウォレスとグルミット、危機一髪!」「ヘ
ラクレス」と、アニメ作品を取り上げているが、現在のアニメ隆盛の、
すべての基は手塚治虫。だとすれば、彼の原作による「ジャングル大帝」
をよけて通るわけにはいかない。
しかも、この原作、手塚としては出来ることならアニメで、それもデ
ィズニー風作品として作りたかった。しかし、当時の貧しかった日本で
は、それは思いもよらぬことだった。そこで彼はマンガによるディズニー
風作品として描いたのだった。
その意気込みはテレビ・アニメのカラー化の最初にこの作品を取り上
げたことでも解るし、力をそそぎ込んだオープニングは、色彩に富み雄
こんで、ディズニーに匹敵する出来を示していたが、やはり早すぎた試
みというべきで、製作体制の整わない中での毎週の中身の方は、残念な
がら、今ひとつだった。
それでもアメリカに輸出され、あげく「ライオン・キング」となった
のだから本望というべきだろう(ディズニー側は「ジャングル大帝」な
るものは知らないそうだが、「キンバ・ザ・ホワイト・ライオン」とい
う、日本人なら絶対に付けないだろう英題がある)。(注)
で、今回の新作だが、動物達だけのシーンでは、今のディズニー作品
以上に、かつてのディズニー風を感じさせるが、人間がからむ場面にな
ると、とたんに日本のテレビアニメ風になってしまう。ただひとり、ヒ
ゲおやじだけが動物達に溶け込んでいた。
ところで、手塚さんだが、マンガがらみだと、なかなか会えない人の
ようだったが、アニメがらみになると、こちらの予測していないところ
に、よくヒョッコと姿を現した。それで、幾度となく一緒の時を過ごす
ことができた。
その最初は二十年ほど前。「世界アニメーション映画史」(この本の
出版記念パーティにも来てもらった)の共著者である伴野孝司が、ある
アニメの十六ミリフィルムを購入した時だった。なぜかアニメのことに
なると、そんな情報も耳に入るらしく、ぜひ見せてほしい。
伴野と共にフィルムを抱えてはせ参じた。アニメ談義に花が咲き新幹
線の最終に飛び乗ったことを覚えているが、今となっては、その時、間
に合わせてしまったことを後悔している。
七ぶらシネマの目次へ