七ぶらシネマ 第24回

リック・ベッソン監督がフランス映画史上最高の製作費を使いSFに 挑んだ。しかも今年五十周年を迎えたカンヌ映画祭のオープニング作品 に選ばれた、となるといやがうえにも期待が高まる。「フィフス・エレ メント」である。 現れた映画は、なんと、ゴッタ煮的な作品。主演するブルース・ウィ ルスから連想すると、テリー・ギリアム監督の「12モンキーズ」によ く似ている。ギリアム作品の、何よりの特徴は混沌の中に、ひとすじの 光を見つけ出すところにある。 ウィリスということでは、この作品の売りのひとつとなっているオペ ラ劇場での大アクション。それは、まさに「ダイ・ハード」そのもの。 そこまで少々ショボクレ気味にさえ見えていたのが、一転、強いのなん の、その破壊ぶりも凄まじい。  実像はスパイ?だったというクリス・タッカーの存在も相当におかし い。珍妙な扮装をこらし、虚勢を張りまくったイヤミな奴だが、最後に はウィリスとのコンビネーションも絶妙。ゲイリー・オールドマンの悪 役も、アメリカの同様な作品を見慣れた目には不思議な存在である。い つもは歓声など上げることがない静かな試写族に、どよめきの声を上げ させたのは、彼の大失策のシーン。  特撮部隊はアメリカ勢で、ハリウッド流のシャープな特撮映像を繰り ひろげているので、よけいに彼らが奇妙なものに写る。 さらには、超大作SFに出てくる政府や軍の最高級幹部というと、い かにもエリート然とした人が登場するものだが、この映画に出てくる最 高司令官などは、その昔のパリの下町を舞台にした映画に登場したよう な、典型的な下町のオッさん風。核の攻撃が失敗に終わったとき見せる 困惑の表情は、些細な悪事が女房に露見した時のグータラ亭主にそっく りである。  ゴッタ煮的な内容と、このオッさん、SFの姿を借りた下町の人情劇、 あるいは探偵譚としか思えない。そういえば、ウィリスの職業は、昔は 特殊部隊の隊員だったが、今はしがないタクシーの運転手。ということ で下町物には、うってつけの仕事。  都合十日にも満たないパリの滞在だが、「北ホテル」の付近で、そし て「パリの空の下で」人々の親切に会い、昔の下町映画に出てきたよう な人たちが健在であることを体験した身には、以上のような書き方は、 「フィフス・エレメント」の評価が、マルであることの証拠。
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