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七ぶらシネマ 最終回
この公開中の「秘密の絆」に対する一般的な興味は、リブ・タイラー、
ビリー・クラダップを始めとする若手スターたちの競演に向けられるだ
ろうが、この映画で何より注目すべきは、一九五十年代アメリカという
背景の見事な再現と、それを可能にしたハリウッドのスタジオ・システ
ムにある。
劇映画作りにあたって、五十年代というのは、明らかに<現代>とは
いえず、だからといって<過去>だとするのには近すぎる、というきわ
めて微妙な時代である。撮影時、多くの部分で現在の品物での代用が可
能でも、それが過ぎると奇妙な五十年代が出現してしまうことになるが、
この作品では、室内の小さな調度品、道路を行く自動車、そして町並み
まで手を抜くことなく、五十年代の情景(それは、あくまでパット・オ
コナー監督の頭の中にあったものであり、なおかつ我々が想像している
ものなのだが)を描き切っている。
もちろん、映画の常として、再現するのはスクリーンに写し出される
範囲の中だけであり、緻密に再現しようとすればするほど、カメラの位
置は被写体に近付くことになる。この作品でカメラを引いての撮影(ロ
ングシーン)は、農場での場面と町の外れを写したところだけ。それで、
全般に閉塞的な感じを受けもするが、物語の雰囲気とは合致していて、
けがの巧名というべきか。
ハリウッドのスタジオを訪れて、まず目につくのは、広大なオープン
セットや巨大なスタジオ群である。誰もが映画華やかなりしころ、すな
わち「七ぶら」の時代を思い起こすに違いない。その場所を、ボガード
が、ジョン・ウェインが歩いていたのだ!。が、スタジオの本来の姿は
巨大な倉庫の中に、年代別に、整然と取り揃えられた数々の衣装や調度
品にこそ求められる。
無数にある食器類、ナイフやフォークさえ、数え切れないほどの種類
が揃っている。天井には「マイ・フェア・レディ」で使われたシャンデ
リア。隣りの建物には、ずらり並んだクラッシク・カーの数々。そうし
た蓄積があればこそ、「秘密の絆」のような格別の大作ではなくても五
十年代の見事な再現が可能となったといえる。
映画のスタジオとは、その中だけで時空を越えたどんな世界でも再現
しうる場所であり、「七ぶら」の途中、映画館に寄ることは、居ながら
にして、あらゆる世界を体験することである。
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