アヌシー国際アニメーション映画祭の「タイタンA.E.」(キネマ旬報2000年8月上旬号31ページ)
劇映画でのSFXで描かれるのと同じ質感の宇宙と宇宙船が
スクリーンせましと登場
極め付きはできあっがったばかりの「タイタンA.E.」
この6月5日から10日までフランスのアヌシーで国際
アニメーション映画祭が開かれた。本誌6月下旬号で
「人狼」の沖浦啓之監督が少なからずの嫌悪感(?)をもって
述べているような、アート系の短編作品のコンペティションが
この映画祭のメイン・ストリームであるという方針は今年も
変わりく堅持されていたが、その一方で商業作品への目配りも
抜かりなくなされていた。商業作品とは、有体にいってしまえば
日米の長編作品のことだが、その扱いの重さ、観客の圧倒的な
支持を考えあわせると(さらにはCG系の台頭も併せ)、
この映画祭の性格が大きく変化していく端緒を垣間見た気がした。
日本勢では長編のコンペに出品された「少女革命ウテナ」と、
特別上映で「ホーホケキョとなりの山田くん」と「スプリガン」。
作品により温度差はあるにしても、どれもが上映前の注目度は
尋常ではなかった。
この日本勢以上に攻勢をかけてきたのがアメリカ勢で、
ウオルトの甥っ子のロイ・ディズニーが大会名誉会長の名を
引っさげて「ファンタジア」と「ファンタジア2000」を
持ち込んだ。「今度のお招きには喜んで応じたよ。
何たって『ファンタジア2000』は他のどんなアメリカの
映画より普遍性があるからね。このフェスティバルは
アニメ業界内でしか知られていない。私も15年前から
知っていたし、2年前のジョー・グラント(「ファンタジア」の
3人の監督のうちのひとり)のトリビュート上映も心得ている。
アヌシーは、本当に良いところだ」というインタビューでの
彼の言葉が言い得て妙というべきだろう。ディズニーがらみでいえば、
コンペの審査員のひとりが「トイ・ストーリー」シリーズの監督
ジョン・ラセターだった。
メイン会場の前の広大な芝生上での「サウスパーク」の屋外上映も
あったが、極め付きはドン・ブルース、ゲイリー・ゴールドマンの
コンビ自らが「タイタンA.E.」を持って、はせ参じてきたことだろう。
ヨーロッパ・プレミア上映との触れ込みで、上映前の広報も力が
入っていて、映画祭参加者の注目度も高かった。最終日の前日の
午後4時(映画祭としては、いちばん盛り上がる時間である)から
上映されたが、その日の朝、メールボックスを開けると、
いろいろな報知や各アニメ会社の宣材とともに「Don Bluth's
TOON TALK」なる雑誌のプレリリース号が入っていた。早速、
眺めていると5分もしないうちにふたりの人から声をかけられた。
「その本、どこで手に入れた」「どうしたら手に入る」。
「メールボックスに入っていたよ」と応えたら、彼ら、自分の
ボックスのところへ走り去っていった。
フォックスのサーチライトで、もう会場は興奮のるつぼ
通常、この映画祭では、どんなに混むことが予想されても
上映10分前に行けばなんとかなるものだが、用心をして30分前に
かけつけてみると、3つある入り口には、どこも長蛇の列。
やっと補助席を確保し、あやうくセーフと思いきや、通路に
座り込んで見る人も大勢でてきた。この映画祭では、満席になると
シャットアウトをしてしまうので、通常ならありえないこと。
きっと、入り口での「見せろ」の圧力がいつにもまして
強かったのだろう。
ブルース、ゴールドマンが大歓声とともに舞台に上がり、
ブルースは「アメリカでは、すぐに封切られるが
ヨーロッパではすこし先になるので、ここに居合わせた
諸君は幸せである」。次いでゴールドマンが「ブルースと
は長い間の同志で....」と述べ始め、その後、ご両人は
観客席へ。上映開始となるのだが、フォックスの
サーチライトで、もう会場は興奮のるつぼというべき状態。
それは映画の終了まで続き、長い長いグレジット・
タイトルの間も、止むことなく拍手が続いた。が、
明かりがつくと関係者の席はもぬけのカラで、まだ満員に
近い観客は拍子抜けといった感じではあった。
古いことばを持ち出すが、漫画映画を見るつもりできた人は、
まず冒頭でとまどうだろう。まるで「スター・ウォーズ」
なのである。劇映画でのSFXで描かれるのと同じ質感の
宇宙と宇宙船が登場するのだ。このところのメジャー系の
アニメでは、背景に3DCGを使い、背景が立体的に描かれる
傾向が強まっているが、この作品で極致に至った
というべきである。その背景の前で、2Dで描かれた
登場人物たちが活躍する。この立体感と平面との違和感を
どうとらえるかによって評価が分かれるところだろうが
「エピソード1」のピングスに相当するキャラクターが
出てきても、こちらはメインキャラクタラーたちとの
間になんの違和感もなく、画面上にぴったり収まっている。
登場人物をしぼり込み、その分わかりやすい
生きの良いアクションの連続という展開は、
祝祭的気分にあふれ、おりあらば拍手をしてやろうと
待ち構えている観客にはもってこいの内容で、コンペで
圧倒的な支持でグランプリを得、観客賞も併せて受賞した
「老人と海」の時の反応も大したものだったが、
「タイタンA.E.」のそれは、その時の何倍もの凄さだった。
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