途切れた線をnetで探す(キネマ旬報1998年10月下旬号232ページ)



本稿は「キネマ旬報」で「TV report:New media」と題してインターネットと

映画について連載していた時のものです。で、論調が他の文章とは異なります。
本連載では、毎回インターネットを万能のごとく書いているが、 たとえば<インド>の<アニメーション>という主題の前では、 ほとんど無力で、その限界も充分に承知している。だからこそ 「インド特集」を目玉としていた広島の国際アニメーション・ フェスティバルに参加したといえる。

前回ふれた映画のリンク集で、最大のものと考えられる CineMediaでも、インドのアニメーションを主題とするサイトは 見つからない。で、検索エンジンの大所でindia & animation の キーワードで検索してみると、今度は何件かのヒットがあるものの、 すべてがインドのCF製作会社で、営業品目としてアニメも扱っている、 というケースばかりである。しかも、そのアニメのほとんどは ディジタル・アニメ。<映画作品>としてのアニメーションという 範疇で扱われているものは皆無だった。

ヒンディー語なりベンガル語なりを少しでも知っていれば、 違う結果も出てこようが、2プログラムにわたって インド・アニメの現物に接することができるとあれば、 広島に出かけるしかない、という目論見だったが、 これが大ハズレ。延々8時間、49本も上映されたが、 見るべき作品はゼロ。観客の逃げ足も早く、この終映後、 「インド特集を全部見た人」として有名人に なってしまったのには、マイッタ。

記録によれば、インドでは1935年にアニメが作られているし、 70年代にはアヌシーで入賞もしている。アニメというのは、 その特質からして、作り続けていれば才能の有無とは関係なく 一定の水準に達するものなので、今回上映されなかった中に、 見るべき作品がある可能性を捨て切れない。この幻の作品を 含めて(含まずとも)8時間もやらず90分程度だったら、 何とかプレゼンテーションの形は出来たかも知れない。これは、 観客にとってはもちろん、インドにしても不幸なことだといえる。 リサーチ不足をも併せて、実行組織の無神経さを指摘されても 仕方ないだろう。(今の時期、インドがらみで無神経といえば、 「ピカドン」なる作品を礎とした広島で開かれる国際大会の 公式パンフレットの裏表紙が、原発礼賛の広告なのも、 原発への立場を越えて、不見識のそしりを免れないだろう)。
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一方、インターネットならではの恩恵を受けているのが、 名誉大会委員長だったレイ・ハリーハウゼンのような立場にいる人。 彼のような特撮マンなど、映画作りの裏方の人については、 これまでの印刷媒体では一定の情報以上のものは入手が 難しかった。ハリーハウゼンのような大物になると 彼自身について書かれた単行本は出ているが、そこに 書かれなかったことになると、とたんに情報の引出しが 困難だった。通常の映画史、事典では「シンバッド七回目の 航海」は、ネイザン・ジュラン監督作品であり、 カーウィン・マシュウズの映画でしかなく、この作品と彼とを結ぶ <線>が途切れてしまうからだ。

印刷メディアでは困難だった、この「線」だけに着目した 発信が可能なインターネットでは、それが盛大に発信されることになり、 広島に出かける前日、ちょこっと眺めただけでも、彼について トータルに触れたページ、ダイナメーションに着目したページ、 彼の創造したクリエーチャーに焦点を当てたページ等を見ることができた。 大会で行なわれたプレゼンテーションで彼が述べたことは、 これらのページから得られる以上の情報を含んでいなかった とのことである。(という書き方になったのは、インド特集と かち合って無念ながら彼のプレゼンテーションを欠席したので、 参加した人から得た話しに基づいて書いているから)。

インターネットと映画の係わりについての連載を持つ身としては、 それらのページのハードコピーをとり、本人に示し、知っているか、 知っているならどれが最良と考えるか、と尋ねようと思いもしたが、 それは、彼について触れた雑誌の記事を持ち出して、これを どう受け止めているのか、と聞きただすことと同じであり、止めた。

かわりに、インターネットを使えば彼の創造したクリエーチャーの リストを作成するのは簡単で、それを持参した。早速、ウエルカム・ パーティでリストを見せながら「どれがあなたのベストか」 と尋ねると、「アルゴ探検隊の大冒険」の西洋版ヤマタノオロチ、 ヒドラとのことだった。当方としては、骸骨のチャンバラを 期待したのだが....。

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